サマースクール

サマースクールの選び方と体験談

nagayama

こんにちは、ワーキングマザーのための受験留学アドバイザー・喜連川綾乃です。

我が家の「無かったことにしたい」体験も含めて、サマースクールの選び方をお伝えします。

私は子供が生まれる前から海外のサマーキャンプやサマースクールに関心を持っていました。しかし、実際に子供を行かせてみると、「ひと夏楽しく過ごし、英語力も伸びる」という期待通りにいかず、失敗体験も味わったのです。

アメリカのサマーキャンプやサマースクールの役割

社会的背景

アメリカの学校は夏休み明けの9月に始まり、5月末に卒業式を迎える時期で一学年が終了します。学校は6月から8月まで3か月もの長い夏休みになります。毎年、親は子供にその長い期間をどうやって過ごさせるかについて頭を絞ります。人気のあるプログラムはすぐ満員になりますので、親は早めの申し込みに余念がありません。

子供が小さい頃は近所のデイキャンプに通わせたり、少し大きくなると湖や山の自然豊かな場所で林間学校のような泊りがけのキャンプに行かせたりします。アメリカ社会にはサマーキャンプ文化が根付いています。American Camp Association(https://www.acacamps.org/)という専門の認証団体もあります。適格なキャンプかどうかを検索して確認できますし、メールで相談にも乗ってくれます。

プロのキャンプコンサルタントもいます。私はニューヨークで一度会ったことがありますが、キャンプコンサルタントは、自分自身もキャンプで育ったというキャンプ経営者の子供で、各地のキャンプ事情に驚くほど精通していました。

中学生、高校生になると、ボーディングスクールや大学のサマースクールに参加します。学校側は夏休み中に生徒がいなくなる寮を稼働させるわけですが、保護者には年間の学費に加えて夏休みの学費が発生するのが頭の痛いところです。サマースクールは午前中は勉強、午後はスポーツ、アートなどのアクティビティを行うメニュー構成で、高学年になると受験のためのSSATやSAT対策も行われます。

サマースクール選び

開成の場合

開成には学校が実施する海外語学研修はなく、生徒が自主的にサマースクールに出願して参加します。学校側は体験者によるサマースクール報告会を開催しますし、プログラムを紹介してくれます。また、アメリカのトップ10スクール以上と同レベルと認められるサマースクール参加であれば、欠席扱いにしないという措置があります。

初めてのサマースクールでESLプログラム(英語の夏期集中講座)に参加したら、また次の年も行きたくなり、親にお金を出してもらう都合上、上級プログラムにステップアップするためにTOEFLを勉強して頑張る、という生徒もいます。高校生になると自分の関心分野を掘り下げ、データサイエンスやコンピューターテクノロジー、経済学、映画製作などの分野で世界各国のサマープログラムに果敢に挑戦します。驚くべきことにクラウドファンディングで学費を資金調達した生徒もいました。

サマースクール実例

最初はハードルの低いESLプログラムで英語を勉強しながら海外生活に慣れるところからはじめて、本人のやる気と努力で、アメリカ人生徒と同じ英語力を前提とするレギュラーコースへとステップアップするとよいと思います。

フィリップス・アカデミー・アンドーヴァー(Phillips Academy ANDOVER)やチョート・ローズマリー・ホール(Choate Rosemary Hall)などのトップ10スクールのサマープログラムは、ESLでもかなりしっかり勉強させてくれます。ESLでもレギュラーコースでも毎日、軽く2~3時間分の宿題が出されるため、それをこなす学習力がある生徒に向いていると思います。

想定  行先              内容など                
中2  
中3
カナダのESLコース
アップルビーカレッジ
APPLEBY COLLEGE(カナダトロント)
https://www.appleby.on.ca/summer-camps
(7月末から1か月間)
※英語力不問
初めて海外のサマースクールに参加する生徒にお勧めです。アジア人も含め世界中の様々な国々から留学生が集まる環境です。
英語初心者も楽しく過ごせるようです。課外活動で
スポーツ、アート、遠足などもあります。 
 
日本の学校の夏休み期間に収まり、料金も手ごろに
1か月フルに参加できます。
中3
高1
アメリカのトップ10ボーディングスクールの    ESLコースに参加                         
(7月を中心に5週間) 
フィリップス・アカデミー・アンドーヴァー サマーセッション
イングリッシュラーニングインスティチュート
https://www.andover.edu/summer/on-campus-programs/summer-learning#ell
※TOEFL60程度の英語力が期待される
 
チョート・ローズマリー・ホール
サマープログラム
イングリッシュラーニングインスティチュート
https://www.choate.edu/summer/programs/academic-program/eli
※TOEFLスコア条件の記載なし
うちの息子は中学3年生でアンドーヴァー校のELLに参加し、オプションでボーディングスクール受験のためのSSATのチュータリングも受けました。
 
アンドーヴァー校のELLコースの公式ホームページには、TOEFL60点レベルの英語力を必要とすると記載が
ありますが、60点未満で参加した開成生もいます。
・前年の11月から出願受付開始。1月末頃までには出願します。
・成績表、エッセー、推薦状などの提出が求められますので、準備が必要です。
高1
高2
アメリカのトップ10ボーディングスクールの
レギュラーコースに参加
(7月最初から5週間ほど) 
TOEFL80以上が条件
フィリップス・アカデミー・アンドーヴァー
サマーセッションアッパースクール
https://www.andover.edu/summer/on-campus-programs
 
チョート・ローズマリー・ホール
サマープログラム
アカデミックエンリッチメント
https://www.choate.edu/summer/academic-enrichment-program/academic-enrichment
アンドーヴァー校やチョート校などトップ校のアメリカ人生徒と同じ授業を受講するサマープログラムです。
 
アメリカ人生徒と同等ですのでTOEFL80以上の英語力が条件です。
 
・出願要領は、ESLコースに同じ。
・TOEFLスコア提出が望ましい。

サマースクールの体験談や感想

息子は中学3年生と高校1年生の夏にアンドーヴァー校のサマースクールに参加しました。その体験談や感想をお伝えします。

1.(中学3年生)フィリップス・アカデミー・アンドーヴァーのELLコース

きっかけ

「トップ10スクールのサマースクールは、しっかり勉強させてくれるのでいいですよ」と日本人コンサルに勧められました。開成の先生にこのサマースクールに参加経験のある生徒を紹介してもらい、体験談を聞きました。「TOEFL60点未満でアンドーヴァーのELLの一番下のクラスに在籍した。プレゼンスキルを鍛えられたと思う。ルームメイトなど生徒達のレベルは高いと思った。結局、優秀な生徒がいる環境で勉強することが大事だと思う」という開成生らしい大人びた回答をもらいました。息子もこの先輩に接し、一流の環境と開成生に実績があるという信頼感から納得してこのコースに決めました。

事前準備

出願準備が結構大変でした。3つのショートエッセーを書き、推薦状や英文成績表まで申請しないといけません。前年の年末までには手配することをお勧めします。決まってからも予防接種を受け、病院で健診などを受けて提出するなどの準備があります。

また送金のためにFlywire (https://www.flywire.com/ja/)というアメリカの教育機関で送金に広く使われている第三者サービスを使います。日本の銀行によっては個別事情で受け付けてくれないこともあるので要注意です。

現地での生活

ボストン空港でアンドーヴァーのTシャツを着たスタッフが待っていて、日本人生徒をピックアップしてバスで連れて行ってくれます。着いたらすぐに英語のクラス分け試験を受けます。息子はCHASEホールで一人部屋でした。今の大学の寮よりきれいです。https://www.andover.edu/news/2017/chase-house-celebrating-community

寮には19人の世界各国から集まった生徒がおり、4人のハウスカウンセラーも住み込み、各生徒の担当アドバイザーとして、毎週様子をレポートしてくれます。レポート内容はなかなか生徒をよく見ているという印象でした。その他に毎週サマースクールのディレクターからニュースメールが届きます。

勉強について

最初のころ、うちの息子はあまり元気がなく心配になりました。コンサルに相談すると、「何とかやっているだけ立派。大変な宿題の量が出て、日本人参加者はみんな必死の状況です」とのこと。ホームシックになってしまい、挫折する生徒もいたようです。サマースクールとはいえ本気で勉強しないと落伍するようでした。

アドバイザーからは息子は少しシャイでもう少し発言して欲しい、というようなことをずっと言われました。淡々としているように見えましたが、友達を作ろうとダンスパーティーに出るなど、後から聞くと驚くような努力をしていたようです。

アンドーヴァーは詳細な評価レポートを期末にフィードバックしてくれます。総合評価のグレード基準は全米トップ校のアンドーヴァー本校とまったく同じということでした。最終評価では大変よいグレードをもらいました。このサマースクールでの体験については、ボーディングスクールへの出願エッセイでアカデミックの達成事項として書き込んでいました。

ELLへの参加効果

参加後にTOEFLスコアが66点(6/10)→77点(8/26)へグンとアップしました。

2.(高校1年生)フィリップス・アカデミー・アンドーヴァーのアッパースクール

きっかけ

ボーディングスクール入学が決まっていたので慣れるために参加しました。

準備など

前年の成績が良かったので、特例で審査不要となりました。

現地での生活や勉強

国際関係論やメディア論など大学並みのカリキュラムがあり、自分の好きなものを選びます。選択科目数は絞り込み、掘り下げて勉強します。大学受験に備えた大学説明会や、近隣のハーバード大学やブラウン大学へのキャンパスツアーもあります。

参加効果

ボーディングスクールでの勉強に慣れるのに役立ったと思います。ボーディングスクールでは入学時のアセスメントテストで英語力不足と判断されると、英語の補講を勧められますが、特に何もありませんでした。

大事なこと

楽しむことと自信を持つこと

サマースクールでは子供が海外での生活を楽しむことが大事です。どこに行っても一定の苦労はあるようですので、自分の力で困難を乗り切ると自信がつきます。

ひと夏だけとは言え、ホームシックが高じて途中で挫折して帰ってくる生徒もいます。子供自身がどうしても行きたい学校があるという場合は別として、最初の学校選びは親が慎重に行い、可能であれば過去に参加した日本人生徒の感想を確認した方が安心です。過大な期待を持たず、まずは海外の生活に慣れて楽しむことからスタートして、海外留学に関心を持つきっかけになればよいと思います。

我が家の失敗体験

無かったことにしたい「悪夢の体験」

息子の初めてのサマースクール選びについて思い出したくない大失敗があります。開成が薦めるジュニアボーディングスクールのサマースクールに申し込んだところ、先方都合により直前キャンセルになってしまったのです。あわてて学校側に相談すると、代替先としてカナダのアップルビーカレッジを薦められました。

そこで私は多数の開成生が行くために「ぬるま湯で良くない」と勝手に判断しました。(一方、「ぬるま湯」であるはずのサマースクールに参加した同級生は大満足でした。)近隣の似たボーディングスクールで同じようなプログラムを勝手に見つけ、息子一人を送り込みました。そのスクールはどうも申し込み時の対応もよくありませんでした。初日に息子から沈んだ声で「僕以外のクラス全員が中国人なんだ」という連絡がありました。驚いて学校側にクラスを変えてくれと要請しましたが、他のクラスも似たり寄ったりだ、ということです。財政優先で、生徒の国籍のバランスをとれなかったようなのです。

その夏は東京で息子のことを心配し続けることになってしまいました。息子からは「こんなことなら今年は来たくなかった。日本でやりたいプロジェクトがあった。来年ちゃんとしたところに行った方が良かった」と至極まともな訴えがあり、「もう英語なんか勉強してもむだじゃないの」と言い出します。

帰国後、留学の話をすると怒り出すようになってしまい、本格的に留学するなど到底不可能ではないかという状況でした。その後、ボーディングスクール受験準備に入っても、彼自身は頭で必要性を理解していても内心では積極的でない時期が続きました。

中学3年生のゴールデンウィークにアメリカに行き、可能な限り多くの学校を訪問しました。その時にボーディングスクールの少人数のクラス運営や、日本人留学生の充実した生活ぶりを見て、徐々に前向きになったようでした。幸いにして実際のボーディングスクールへの留学体験には本人も納得したようで、「行ってよかった」と感じているようです。

思い出

親心というもの

ほとんどのご家庭では子供を海外へ一人で飛行機に乗せて送り出すのは、サマースクールが初めての体験となるのではないでしょうか。14歳の息子が海外から初めて飛行機で帰国する時には、Unaccompanied Minor serviceという航空会社の子供の一人旅用のサービスを使いました。航空会社のケアサービスはしっかりしており、羽田で帰ってきた息子を見ると本当に一安心しました。

アメリカの入国審査ではイレギュラーな事態になることもあります。まだ中学生の頃は、日本から息子の乗った飛行機が出発し、アメリカの空港で無事に学校スタッフにピックアップされたとわかるまで胸を詰まらせて待っていました。子供の留学では、こんなに子供のことを心配し、想っているんだと、改めて気づかされることがあります。

空港でひと夏の間に背が伸びた我が子を出迎え、落ち着いた表情を見ると、心から安堵したことを思い出します。

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