母が見た開成中学・開成高校その2
こんにちは。受験留学アドバイザーの喜連川綾乃です。
「母が見た開成中学・開成高校」シリーズその2では、私が母として息子の間近で見聞きした開成の学校生活についてご紹介します。
麻布や筑駒との違いについてもお話しします。
開成の学校生活3つの特長
友人たち
何と言っても開成生活の宝は、12歳から18歳まで一緒に過ごす友達の存在です。
うちの息子に「開成の子ってどういう子たちなの?」と聞いたことがあります。「個性が強いよね、僕なんかより強いよ」と言っていました。私は驚きました。息子も個性が強い方なのに、それより上を行くとは。
開成の子たちの中には、一つの物事に熱中し、探求していくタイプが出現するように思います。別に開成が個性を伸ばそうとしているわけではありません。受験を押しつけない校風や男子校のため、異性の眼にはイケてないと映りそうなことでも平気でできることが影響するのではないかと思います。
漫然と勉強をするというよりも、特定の研究テーマやクラブ活動で関心を持ったことを突き詰めて国際レベルに到達するポテンシャルがあります。息子の友達には生物が好きで、粘菌に関心を持ち自分でひたすら研究を続け、ついに表彰された友達もいました。そののめり込み方は怖いほどで、「天才」というのはこういうものなのかと思いました。クラブ活動のコントラクトブリッジで世界大会に進出した友達もいます。
開成は数学オリンピックや物理オリンピックの成績優秀者の常連校でもあります。あまり知られていませんが、哲学オリンピックの受賞者も多数いますし、2023年度の俳句甲子園で優勝しています。理系の生徒が多いですが、文系に秀でた感性に優れた人材もいるのです。
開成には長い歴史を持つ運動会や文化祭など、男の子たちが熱く燃えるイベントが適度なタイミングで設けられています。個性と才能ある男の子たちが6年間ぶつかり合い、協力し合いながら成長すると、強い絆が生まれます。
卒業してからも開成生はよくツルむ、と言われますが、きっと代替の利かない存在なのではないかと思います。息子は卒業してからも誰かしら開成時代の仲間といつも会っています。開成から東大に進むと周囲にはいつも開成の知り合いがいますから、元々仲がいい友達といつでも会える環境にある、といえます。
開成卒業生であるマネックスグループ創業者の松本大さんの開成での講演を聞いたことがあります。松本さんは開成愛の塊のような人です。開成の同級生と飲み会を行ったところ、5次会まで行くことになってしまった。そんなにみんな一緒にいたいのなら定期化することになったという話でした。
組織的な仕事
開成の名前の由来は、中国の易経にある「開物成務」に由来します。これは、一人一人の潜在能力を発揮し、天命を成し遂げ、社会に貢献することだと解釈しています。これは開成の教育理念になっていますが、生徒の成長過程のバックボーンとして当てはまると思います。
息子はよく、「学校で仕事をする」「あの子は仕事ができる」と言う言葉を使いました。開成の子供たちがやっていることは、企業の組織運営に似ています。学校は教育理念として「自主自律」を尊重します。
自分たちでルールから考えることが特長です。まだ12歳の中1の時から、各組のホームルーム運営は、席替えでさえみんなで議論して決めていました。息子もアンケートを取って体制変更を求めたことがあります。また、ホームルームで何かの委員会を立ち上げ、決議してゆくなど、組織としての意思決定を繰り返します。
中高一貫の縦社会
開成生は自主的な組織運営に携わり、中1から高3までの先輩・後輩関係にもまれて成長します。
生徒会はさながら企業の取締役会のようですし、監査委員会まであります。生徒会本部の下部組織として、クラブ活動委員会、運動会準備委員会、文化祭準備委員会などがあり、それぞれの委員長は人望のある優れたリーダーシップの持ち主が投票をもとに選ばれます。
開成の歴史と伝統のある運動会や文化祭の準備は上級生にとっては晴れ舞台です。高3の優れた先輩が全精力を傾けているのを見て、下級生はそんな先輩に限りなく憧れ、先輩のようになりたいと心から思います。私も子供がまだ中1の頃は、運動会指導の上級生と直接連絡していましたが、その優秀さ、情熱は素晴らしいものがありました。先輩がよいロールモデルになることは中高一貫校の良さだと思います。縦社会に慣れた開成生は、組織を動かすポテンシャルをはぐくみます。
<開成の生徒会組織図>
麻布や筑駒との違い
麻布中学・高校や筑波大学附属駒場中学・高校の生徒たちも個性が強いことは同じです。開成が違うのは、個人が自分の好き勝手にやるということではなくて、子供たちなりに歴史と伝統の重みを感じていることです。
先輩たちが磨き抜いた大事な仕事を果たすことにプライドを持ち、組織の一員として役割をこなし、ルールや枠組みから考えます。よりよい仕事をすることに喜びを感じる、という官僚のような働き方をします。