高校留学

「だいきのボーディングスクール日記」Taborに残る決意~10thに進学

Ayako Mani

こんにちは、ワーキングマザーのための受験留学アドバイザー・喜連川綾乃です。

米マサチューセッツ州マリオンにあるTabor Academy(テイバー・アカデミー)へ通うだいきさん。夏休みを日本で過ごしてTaborへ戻る直前に、だいきさんと母のとも子さん(1995年Tabor卒で、日本地域卒業生代表を務める)にお話を伺う機会をいただきました。Taborで1年を過ごしただいきさんは、どのような心境で最初の1年を過ごしたのでしょうか。

冬の厳しさに心が折れかけた日々、支えてくれた人たち、9年生からアメリカの学校へ飛び込むことの意義、Phillips Academy Andoverでのサマースクール経験、そしてこれからの目標まで、だいきさんの留学1年目のリアルを聞きました。

Taborに「残る」と決めた理由

Taborに9年生で入学した時点で、日本の中高一貫校に籍を置いたままだっただいきさんには「1年で帰る」か「Taborに居続ける」か、2つのルートがありました。

Taborでの1年間を終えただいきさんは、秋からもTaborに残る決断をしました。そんなだいきさんに、1年間を振り返っていただきました。

――途中で日本に帰りたくなりませんでしたか?

だいきさん(以下、だいき) 最初に迎えた冬はとても寒く、精神的に落ち込みました。Instagramで日本にいる友達の生活や、学校の文化祭の様子を見ていると、「日本にいたら自分もこんな生活を送っていたんだろうか」などと考えることもありました。

――2024年12月にクリスマス休暇で日本に戻った時には、どう感じていましたか?

だいき 「帰りたくない」と感じました。友達と遊んで、家族と一緒に新年を迎えて、いつもの生活をしていたら、日本を発つ飛行機に乗る直前に、とても寂しくなりました。

――Taborは好きになれたのでしょうか?

だいき 勉強も追いつけていたし、楽しく過ごしていました。Taborでの生活が悪かったわけではもちろんありませんが、どうしても日本と比べてしまっていました。

――日本を離れた寂しさは、どうやって乗り越えたのでしょうか?

だいき 支えになったのは、先生や先輩留学生でした。とてもやさしく、親身になって話をしてくれました。乗り越え方を聞き、自分の気持ちを落ち着かせる方法を模索しました。

――「ボーディングスクールに残る」ことによる価値についてはどう考えましたか?

だいき 自分にとっての留学を続けることのメリットを客観的に見ていました。日本にいたら経験できないことを経験できますし、中国や韓国からも生徒が来ていて、いろいろな人と巡り会える場所だと思っています。

Taborでの学びのリアル。得意な分野と壁となった科目、クラブ活動、中学受験の意義

――だいきさんが今「Taborに留学してよかった」と感じていることは何ですか?

だいき 一番大きいのは、国外にも友達が増えたことです。中国、韓国、タイ、ベトナム、アメリカなどいろいろな国に友達がいます。Phillips Academy Andover(フィリップス・アカデミー・アンドーバー)のサマーセッションに行ったときも友達から連絡が来ました。

「行く先々に友達がいる」というのはとてもいいことだと思っていますし、逆に友達が日本に来た時にも自分から声をかけて夏休みに会うなどしました。自分が大人になったときに、海外に友達がいるのは大きなメリットなんじゃないかと思っています。

――英語は相当話せるようになったのでは?

だいき 目の前で母が顔をしかめていますが(笑)、自分自身では、人を助けてあげようと思うくらい英語力がついたのが、1年間でよかったなと思うところです。2025年6月に一度日本に帰ってきた際に、困っている人が英語で話しかけてきた時に英語で対応したり、通訳の役割をしたりしました。

――Taborの授業での英語の聞き取りはどうでしたか?

だいき 先生がおっしゃっていることは基本的にはわかるようになりました。次の課題や必要なものなどを聞き取れています。

――勉強のレベルとしては、ついていける内容でしたか?

だいき 個人的には、授業は入学直後の数ヶ月は難しかったですが、だんだん慣れてきます。ボキャブラリーがついてこない、宿題が多い課題については、自分がどれだけそこに時間をかけられるかによると思っています。もし英語ができないようであれば、1日2~3時間の学習は必要なのではないかと思います。先生は、TaborではStudy Hall(寮で定められた学習時間)が2時間設けられているのでそこで調整できるようにしていると言っています。

――だいきさんの苦手な科目について教えてください。

だいき 英語と歴史が大きな2つの関門でした。英語に関しては、本を1冊読む必要がある場面で、「次の授業までに20~30ページを読んできなさい」という課題があり、よくわからない本を2日後までに読まなければならないのが重かったです。歴史についてはエッセイを書くなど、自分がアウトプットしなければならず、最初の数ヶ月はすごくストレスでした。あまりネガティブな気持ちにならない自分ですが、ネガティブになることがありました。

自分の場合は、中学受験をしておいてよかったと思っています。授業で英語がわからなくても「受験の時にやったな」と思える時があります。特に数学のレベルは上げておいてよかったです。

――今後の進路の希望についてはどう考えていますか?

だいき 自分がTaborに残るかどうか……つまり、日本とアメリカどちらを取るか悩んだ時に判断材料にしたのは、英語のアドバンテージが大きいということです。日本に帰ると他の人と同じように受験をすることになりますが、その際に自分がTaborで得たものをうまく使えるのかどうか悩みました。そして、4年間をTaborで過ごす方が、いろいろな意味でいいのではないかと考えました。

日本から留学する人は大学時代に行ったり、高校の1年間で行ったりする人が多いと思います。自分の場合は、Taborに残った方が、自分の将来にうまくつなげられるんじゃないか、英語力を伸ばして将来につなげていけるんじゃないかという期待感を持っています

――留学には、周りの人とコミュニケーションしてネットワークを作れるパーソナリティが必要だと思います。だいきさんにはそれができるので、有形無形の財産になるのではないでしょうか。

だいき 自分の生活スタイルとしては、一人でいる時間より友達といる時間の方が多いです。授業の内容について聞きたくても、先生が厳しいから生徒に聞くしかない、そうであれば英語で誰に話しかけようか……と、「英語で自分の言いたいことをちゃんと伝える」というハードルの高いことをする必要がありました。そこに留学の良さがあったと思っています。

――クラブ活動はどうしていますか?

だいき 自分が日本で唯一経験したことがあるのがアイスホッケーだったので、この1年の中では基本的にはアイスホッケーに軸を置いていました。次の年もアイスホッケーがメインになるのではないかと思っています。

ひとつ新しく頑張ってみようかと思うスポーツがあります。ボート(ローイング)です。先生もコーチも体育会系でトレーニングはきついですが、やればやるほど自分の成長がわかります。

とも子さん(以下、とも子) ボートはアメリカでも限られた地域と学校でしか行われていません。打ち込めば成果が出る団体スポーツです。メンバーそれぞれに役割分担があって、コミュニケーションやチームワークが必要になってきますね。ちなみに、ボートで選手として成果を出すと大学推薦につながったりなど日本人には知られていない大学進学ノウハウもあります。

ボーディングスクール「9年生入学」の価値

――だいきさんは9年生(日本の中学3年生相当)でTaborに入学しましたが、率直に当初はどう感じましたか。

だいき 9年生では最初何もわからないので、最初に助けてくれた先輩が親しみやすく、いろいろ相談に乗ってくれたのでとても助かりました。自分から話しかけにいくことももちろん大事ではありますが、最初にどんな人に会えたかも大きいと思っています

アメリカでは9年生からスタートする学校が多いです。10年生や11年生で留学をスタートすると、既にクラスの中に知り合いの輪ができていることが多いと思うのですが、9年生からであれば「みんな初めて」なので、助け合いが生まれやすいのではないかと感じます。

――今では日本の中学校の制度が変わってきていて、9年生からの留学を認める学校もあると聞きました。いいトレンドだと思っています。他に留学する方は学校にいましたか?

だいき 同じ部活の先輩がおそらく初めての留学生で、個人留学でおよそ1年アメリカに行っていたと聞きました。今は日本に戻っており、高校3年生で、日本の大学よりも海外の大学に興味があると言っていました。

――だいきさんが当初留学しようとしたのは、Tabor出身者であるお母さんのとも子さんの影響ですか?

だいき 母の影響は大きいと思っています。海外旅行に行った際に、母は英語が話せるのでツアーガイドが要りませんでした。「英語が話せるってすごい」と感じました。その後中学2年生の時にカナダのサマースクールに行っていろいろな人と触れ合い、リスニングとスピーキングが少しできるようになってから、海外留学に興味が湧きました

――受験や出願の準備に際し、そうした経験のない中学校の先生に対応していただくのは大変だったのでしょうか?

だいき 先生たちは皆協力的でした。Taborの出願に必要なものは、成績の開示と、推薦書です。アメリカと日本で成績の評価の仕方が異なるため、担任の先生と英語の先生、校長先生に、一人ひとり書いてもらう必要がありました。

――とも子さんに伺います。学校側に中学3年生での留学を認めてもらう時にどんなご苦労がありましたか?

とも子 中高一貫校では、中学の段階で留学させるというのはハードルが高く、個人的に交渉することが必要でした。

――ハードルは高くても、9年生からの留学には価値があるのですね。

とも子 全員新入生の9年生からの方が入学しやすいのは確かですね。9年生であれば英語力なども伸びしろを見て寛大に見てくれるはずです。私の時代は、現地の方でも転校して出たり入ったりする人が多かった印象がありました。

――日本でいう高校生の学年まで留学を続けた場合、日本の大学を受験する資格はあるのでしょうか?

とも子 自分は小学校卒の状態で日本の大学受験をしました。「12年間の教育を受けた」ことで各学校が特例として認めている受験制度を使いました。

夏のAndover(アンドーバー)でESL

だいきさんは、2025年7月から8月の初めにかけて、Phillips Academy Andoverで、母語が英語ではない学習者が英語を学ぶ教育プログラムのELL(English Language Learners)に参加しました。ライティングと語彙の基礎を固め、ディスカッションやプレゼンにも取り組みました。その時の話を聞いてみました。

――Andoverのプログラムについて教えてもらえますか?

だいき 自分の印象としては、授業数がライティングと基礎的なボキャブラリーの2つだったので、Taborの英語や歴史と比べたらなんてことはないと思いながら授業を受けました。TaborにはESLがなく、英語力が高い宿題を出されていたので、ELLは「とてもハードなわけではない」と思えました。

だいき 少し大変だったのは、ディスカッションのように自分から参加したりプレゼンしたりするものが多かったところです。先生がプレゼンして、「次の次の授業では皆さんにプレゼンしてもらいます」と言われました。日本人で同じコースを取っている人が3~4人いて「難しい」と言っている人もいましたが、僕にとってはちょうどよかったです。

――宿題に追いまくられるという状況ではなかったのですね。

だいき そうですね。Taborの夏休みの宿題に追われていました。

――Andoverでの体験は楽しかったですか?

だいき 楽しめたと思います。いろいろな人と出会えます。寮では一人で広い部屋を使えて、ホームカウンセラーが一人ついてくれます。Andoverの近くには、Taborの周辺にはないようなダウンタウンがありました。

次のステップは「TOEFL」、そして今後やってみたいこと

――アメリカでの大学進学には、TOEFLが必要になってくると思います。今後の学習の計画について教えてもらえますか。

だいき アメリカで大学受験をすることを視野に入れると、来年度そろそろ受ける必要があります。

とも子 大学を受験する時に同級生と同じタイミングで、などいろいろと思いを巡らせています。今年は高等学校卒業程度認定試験(高認、以前の大検)を8教科受けて、お守りのようにしています。英語は自己採点では満点でした。

――今後、英語力はどんどん上がっていくと思います。TOEFL向けのスコアメイキングにはそんなに時間を取る必要ないと思います。

とも子 中国から来ている人は、ボーディングスクール留学時点で110点取っていますしね。日本人の留学人口の母数が少ないのはしょうがないですが……。TOEFLは結局、テクニックの問題だと考えています。親御さんが相当やり込ませるようにしないと、なかなか難しいと感じています。

Andoverでは大学進学説明会やブラウン大学などへのキャンパス訪問の機会もあります。Yale University(イェール大学)、Brown University(ブラウン大学)、MIT(Massachusetts Institute of Technology、マサチューセッツ工科大学)など、いくつか大学についてカウンセラーに話を聞いたそうです。このクラスの大学出願では、英語は出来て当たり前で、自分が高校で何をしたかについてアピールする必要があると思っています。学校の成績も大事ですが、スポーツや課外活動がユニークで際立っていることが合格につながるはずです。

――大学の出願の際には、「これを勉強したいから出願する」という内容で提出をするので、現時点で憧れがあるなら、今からいろいろ研究するとプラスに働くと思います。

だいき 10年生が始まったらいろいろ考えたいと思っていますが、日本の文化に興味・関心があります。学生が母国のレシピを紹介するイベント「インターナショナルディナー」の時に、「日本のお茶」をやろうと思っているんです。

インターナショナルディナーのメニュー

だいき 自分がお茶を点てるのはもちろん、できるだけ体験型の企画にしたいと考えています。Taborにはセラミック(陶器)制作のコースがあります。自分で一から陶器を作り上げて自分でお茶を点てるというイメージです。セラミックの授業を取っている人を巻き込んで、はじめから終わりまで体験できるようにしたいです。今「抹茶」がアメリカでは人気なので、いろいろな人に「お茶を点てること」について興味を持ってもらえるのではないかと思っています。

とも子 このような企画には、「在学生として同じ在学生をサポートしていく」という、コミュニケーションやリーダーシップが求められます。受験につながるからやるというわけではありませんが、きっといい経験になると思っています。

――久しぶりに対面しただいきさんは驚くほど成長していました。きっと人には言えないような様々な苦労を乗り越えたからだと思います。

ぜひ将来、Taborを代表する日本人になっていただきたいです。

だいき Taborのインターナショナルセンターに、顔写真が掲載されるようにしたいです


Taborで、「日本に戻る」と「アメリカに居続ける」の岐路に立った時、だいきさんは「居続ける」を選びました。冬の孤独、課題の重圧、言葉の壁――それらを乗り越える時にだいきさんを支えたのは、先生や先輩、友人たち、そして自分自身との対話だと思います。

Taborでの4年間を、自分の将来につなげたいと語っただいきさん。自分で選び取った覚悟と、9年生スタートのアドバンテージを活かして前に進む様子を、これからも楽しみに追いかけていきたいです。

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