海外トップ大学進学その6.涙のエッセイ添削
こんにちは、ワーキングマザーのための受験留学アドバイザー・喜連川綾乃です。いつもお読みいただき、ありがとうございます。
受験には他人には分からないような親子ならではの葛藤がつきものです。我が家の奮闘がただいま渦中にある皆様の応援になることをお祈りします。
出願校決定
アイビーリーグに絞る
11月1日のアーリーディシジョン出願前の10月初旬にはクリムゾンエデュケーションの規定で出願校5つを選定して保護者の合意文書を取付けられました。(5校がクリムゾンのサービス契約の対象ということです。)
その前にストラテジストとの間で出願校をどうするかについて3者ミーティングを行い、ディスカッションしました。クリムゾンでは出願校を「リーチ」というドリーム校、その次の「ターゲット」という現実的な学校、滑り止めの「セーフティ」校にカテゴリー分けします。アイビーリーグと出願予定のリベラルアーツカレッジのアマースト大学はすべて「リーチ」のドリーム校でした。ドリーム校ランクにはクリムゾンは独自の合格率算出をしていましたが、一般の進学サイトでは確率判定も出ない超難関でした。
ここで「追い風」なのかどうか分かりませんが、積極化に動ける材料が出来ました。東大模試の合否予想がA判定だったので、私の意見で5つの出願校をアイビーリーグ校に絞ることにしました。(正直言ってこれはクリムゾンとスムーズに交渉するための私のこじつけです。簡単に東大に合格できるわけでは絶対にありません。)ターゲット校とセーフティ校は、エッセイを流用して自己対応すればよかろうということにしました。
クリムゾンのストラテジストは8月末にP氏からK氏に途中交代していました。K氏はP氏とはタイプが異なり、受験戦略をビジネスライクに進める実績ある方でした。自分から私に面談を申し入れるなど、出願プロセスをビシビシ管理してくれました。私とも相性がよく、任せられる人でした。P氏はアカデミックな知識全般が豊富な方でした。推薦図書を与えてくれ、学校選びのためにブレーンストーミングをしてくれるなど、エッセイへ取組む土台作りを行ってくれていましたので、それを受けて出願準備体制に入るよい流れになりました。
クリムゾンは独自のノウハウで、相性診断に基づき全世界の候補者から担当者を決定します。最近は日本との時差に無理がないように選定を考慮しているようです。
それまでのストラテジストのスタンスなら出願先をアイビー校に絞り切るという案はお勧めしない、という見解だった思います。私の極端な希望にK氏は驚くほどすんなりと同意してくれました。それは、10月中旬に息子のSATの良いスコアが出ていた、という背景があります。MATHセクション満点で、トータル1540でした。K氏はこのSATスコアが出てからアイビーリーグ出願に目に見えて本腰をいれてくれるようになったのです。つまり合格のチャンスがある出願者、という見方に変わったという印象でした。それまでは一体なんだったのか?
最近は大学によっては出願時にSATスコア不要という選択肢もあるようですが、良いスコアを取ればアメリカ人審査官にとって安心保証を与えられると思います。(それだけでは決まりませんが)
涙のエッセイ添削
出願1週間前に母が添削
息子のエッセイ作成の途中プロセスには私はタッチしていません。ハーバードの大学院の学生がメンターとして頑張ってくれており、息子は満足している様子でした。
出願1週間前になって、K氏はエッセイ案を私に連携してくれました。
それを読んだ時の私の感想をどう表現すればよいのか・・・。私は感極まって、涙が止まりませんでした。そこには、母子家庭で育った生い立ちがその大学で勉強したいという動機になったことが綴られていたのです。
全体を一読して直感的に「これなら学校側も落とすことはまずないだろう」という安堵感を得ました。息子の場合、特に国際的な受賞や活動歴はありません。ただ、志望校とのフィット感が素晴らしく、生い立ちを含め他の日本人とは違う、アメリカ人好みのユニークさが際立っていました。一言で言うと「キャンパスの中を歩いている姿が目に浮かぶ」という読後感でした。
母が改善した項目
良く出来てはいるものの、課外活動や学校での経験における達成事項の記述が遠慮がちであることが気になりました。1週間前というギリギリのタイミングで気が狂いそうになり「勘弁してよ~」と心の中で叫びながら、事実関係を調べた上で下記のような補強をコメントしました。例によって、息子は気に入ったところだけは採用したようで、出来上がったものを見るとインパクトが俄然アップしていました。
1.課外活動のインターンについて
- 「日本初」の高校生主導の活動になったこと
- NPO活動のコンセプトが志望大学の元教授に創始されたことを明確にすること
- NPOで自分からプロジェクト立上げを提案し、全体のプロジェクト設計を行い、リクルートや企画の運営をリードしたこと(東大教授とコラボしたことなど)
- 評判を呼んで、メディアにも取り上げられたこと
- 将来、この分野で日本のリーダーになりたいと考えていること
2.開成での活動
- グループリーダーとして、メンバーの強みを生かし、適材適所の配置で強味を引き出して、信頼を勝ち取ったこと
3.リサーチプロジェクトのエッセイをブログとして公表
- これは出願前夜に行っていたようで、ドキドキしました。
Financial Aid(運命の別れ目)
勇気のいる決断
出願プロセスで決断がいることがもう一つあります。Financial Aidという大学側の学費援助を申請するかどうかです。
アメリカの私立大学の学費は高騰しており、年間9万ドルは必要です。アイビーリーグ校は学生の家庭の経済状況により、学費援助をかなり行っています。開成からハーバードに進学した学生もハーバードから学費援助をもらったと言っていました。
学費援助の必要性が合否決定に影響する場合があります。これをneed awareと言います。一方、need blindは、入学審査では学費援助申請を一切考慮せずに入学許可を出す制度です。アイビーリーグ校はアメリカ人学生にはneed blindです。留学生にはneed awareの方針をとる学校もあります。ハーバードやイエール、プリンストンは、卒業生などの寄付や資産運用により財政状況が潤沢で、以前から留学生にもneed blindとする寛大な方針です。ブラウン大学は留学生が資金難で退学しないといけない事態が発生したことなどから、議論の末、留学生にもneed blind制へ移行することを決めたようです。
うちの息子の志望校は、留学生にはneed awareの方針でした。合格率を高めるためにアーリーディシジョンを選択していましたが、need aware校へのfinancial aid 申請は不利になります。
私は息子が本当にこの学校に入りたいかを確認した上で、合格率を高めるために、financial aid申請を行わない決断をしました。一生をかけて気持ちよく第一志望校に合格させたかったのです。何かあれば、家を売ればいいか、と。
息子は「大丈夫?」と聞きました。私は息子に言いました。「アイビーリーグに合格することは、家一軒分くらいの価値はあるのよ」と。
インタビュー
アイビー卒業生とのインタビュー
10月30日に願書を出してから10日くらいで、インタビューのアポイントがありました。アジアにいる卒業生とのオンライン面接でした。
時差の関係で早朝より面接することになり、おにぎりを作って食べさせて祈るような気持ちで耳をそばだてていました。声がしっかりと出ており、充実した会話が弾んでいるようで、あまり心配なさそうでした。
ひとつくらいは安心できる工程があってよかったくらいに思いました。
ちなみに、インタビューを受けたのに不合格になった先輩もいました。
アーリーディシジョン
大学受験終了
アーリーディシジョン出願からしばらくは、日本の大学受験や、レギュラーディシジョン校の準備に明け暮れました。
あまり意識しないまま発表日の12月15日を迎え、息子から早朝「受かってた」とあっさり言われました。その後、関係者にお礼かたがた報告すると、congratulationメールが多数舞い込みました。
我が家の大学受験はこれで終了となりました。
(ご参考)Financial Aid制度について
アイビーリーグ8校のFinancial Aid制度(2023/9/30各校のFinancial Aid情報より)
大学名 | 留学生へのFinancial Aid制度 |
ブラウン大学 Brown University | 2029年卒業予定者よりneed blindに移行 |
コロンビア大学 Columbia University | need aware |
コーネル大学 Cornell University | need aware |
ダートマス大学 Dartmouth University | 2026年卒業予定者よりneed blindに移行 |
ハーバード大学 Harvard University | need blind |
ペンシルベニア大学 The University of Pennsylvania | need aware |
プリンストン大学 Princeton University | need blind |
イエール大学 Yale University | need blind |
need aware制の撤廃について
昨年息子の大学のファミリーデイに参加してみました。Financial Aidオフィスを訪問して留学生向けのneed aware制の撤廃について質問すると、「今後の予定は何とも言えない」ということでした。
一方、よく学校からは保護者への寄付の依頼があります。関心があるテーマだったので少しは参加しようか、と息子に意見を聞くと、「寄付なんてする必要ない。アイビーリーグ校はお金なんて有り余るほど持ってるから」という意外な返答でした。
すぐにneed blind制へ移行する用意もないが、財政状況は十分、というところではないかと思います。