中学生のための英語力向上法
こんにちは、ワーキングマザーのための受験留学アドバイザー・喜連川綾乃です。
一定レベルの留学を志した場合、TOEFLの受験が必要になります。TOEFLは英語学習の初心者にはハードルが高い試験です。中学生が英検やサマースクールを活用しながら、無理なくTOEFLのスコアアップを目指す方法についてお話しします。
TOEFL受験への長い道のり
TOEFLとは
TOEFL(”Test of English as a Foreign Language”の略)とは、英語を母国語としない人々を対象に英語の4技能(「読む」「聞く」「話す」「書く」)の能力を測定するために開発された世界基準の試験です。アメリカの非営利教育団体ETSが主催しています。日本からアメリカの私立高校や大学へ進学するためには、TOEFL iBTのオフィシャルスコアを学校に提出することが求められます。
TOEF iBT テストはReading、Listening、Speaking、Writingの4セクションから成り、スコアは0-120(各セクション0-30)で評価されます。受験申し込みは、ETSのホームページ(https://www.jp.ets.org/toefl.html)でアカウントを作成して行います。各地域のテストセンターへ行って受験します。音響が良好なテスト会場情報がネット上で出回っており、人気会場は早く埋まります。
2020年にはパンデミックのため、Home Editionという自宅受験型のテスト形式がリリースされ、現在も継続されています。Home Editionのスコアを認めない学校もありますので、学校の入試要綱ページで事前確認が必要です。なお、うちの息子はHome Editionを利用したことがありますが、外部受験よりスコアが良くなるわけではありませんでした。
TOEFLの重要性
出願先の学校が入試要綱ページに最低限必要なTOEFLミニマムスコアを明示していることがよくあります。英語に慣れ親しんだ帰国子女でもない限り、いわゆる「純ジャパ」(日本生まれ日本育ち)の受験生はTOEFLスコアをアップするために必死の努力をします。
息子のためにアメリカの全寮制私立高校であるボーディングスクール受験を考え始めた時に、アメリカ人コンサルタントに相談したところ、「彼のTOEFLテストは大丈夫なのか?あなたが望むようなトップスクールに受かるには最低でもTOEFLスコア100点は必要で、英語が完璧である必要がある」と言われました。TOEFLスコア100点と言えば、海外大学を目指す開成高校の生徒が目指す水準でした。
私はTOEFLスコアが低くても何とかトップスクールに入る道はないかを模索しましたが、無理でした。難易度・魅力度が高い学校ほどTOEFLの高いスコアを求める、という結論に達しました。あるレベル以上の学校に入るにはTOEFLの受験勉強に取り組み、スコア対策するしかないと悟りました。
アメリカ人の入学審査官にとっては、TOEFLの信頼性は高いようです。入学審査官が「この生徒は他に才能があるから」という理由でTOEFLスコアの低さに目をつぶってくれるということは考えにくいと思います。
必要とされるTOEFLスコアレベル
ボーディングスクールの訪問時には、どの程度のTOEFLスコアが必要かを質問しました。中堅校クラスでも「留学生の平均は90点から100点くらい」と言われます。留学生も色々あり、例えば、中国人生徒は入学枠が限られており、熾烈な競争になるため、バイリンガルが多いと思います。
息子の面接時には審査官から「私たちは経験則で、TOEFL80点あればクラスの中で不安なく勉強することができることを知っている。ぜひ80点を獲得して出願して欲しい」と言われました。アメリカではディスカッション中心の授業となるため、英語力が低いと一人だけ苦労して浮いてしまい、他の生徒の足を引っ張る存在になると考えているようです。
TOEFLの難しさ
帰国子女でもない日本人中学生がTOEFL80点以上のスコアを安々と達成できるかというと、大変に難しいと思います。開成の場合を例にとると、高校2年生の夏休みにアメリカの有名校のサマースクールのレギュラーコースに参加するために、出願基準のTOEFL80点以上を目指して頑張って勉強する、というのが相場です。息子の留学先の先輩で、帰国子女で超難関の中高一貫校の出身者でも中学3年生時点ではTOEFL100点には少し足りなかった、ということでした。
息子にTOEFL iBTを受験させる前に、私がまず受験してみました。率直に言って、大人の私でも受けたくないという感想を持ちました。これを自分の子供に受験させることができるのかがそもそも心配になりました。
私が感じたTOEFLの難しさの特徴は、以下の3点です。
- アメリカの大学を想定した学術的な内容であること。アメリカの大学で勉強するような文章や、学生と教授の会話場面などが素材になっています。
- テスト環境が過酷であること。受験時にはセキュリティチェックや写真撮影もあるため、ものものしく緊張する要素に事欠きません。インターネットから配信される問題をPC操作で回答する形式もドキドキします。
- 4カテゴリーあるため、スピーキングやライティングなどでもまんべんなく得点する必要があります。どこかが伸びてもどこかが失点しがちなのでトータルスコアアップには実力が必要です。
日本の中学生はTOEFL80点をまず目指そう
うちの息子の場合は、アメリカのボーディングスクールへ高校1年生の秋学期からの進学を考えていました。スケジュールとしては、中学2年生の秋から準備を始め、中学3年生の終わりの1月15日までに出願しないといけません。中学1年生の1月に英検4級を受けただけでしたので、TOEFLスコアがどこまで伸びるかが見通せません。また、学校側の日本人生徒への最低限のTOEFLスコア期待値が分かりませんでした。
留学フェアで日本の私立高校出身の有名校留学経験者に会ったので、思い切って質問してみました。TOEFLについては4か月で30点から70点までスコアアップした、とのこと。日本人生徒の獲得に熱心な学校なら上位校でも80点で受け入れられる可能性があることも分かり、TOEFLスコア80点~90点の獲得が現実的な目標になりそうでした。
「出願期限までに、果たして80点に到達できるのか?どうやったら達成できるのか?」と日夜考え続けました。
TOEFLはいきなり受験してはいけない
焦る気持ちはあるものの、中学2年生で英検3~4級レベルの息子にTOEFLをいきなり受験させるのは止めました。自分が受験した感想から、その時点の息子にはTOEFLの勉強が消化不良となり、アレルギー反応が出る恐れがある、と判断したのです。高い英語力があるわけでもない日本人中学生にアメリカの大学並みの英語をむりやり詰め込むことは無理ではないかと思いました。過酷なテスト環境に堪えられるかという心配もありました。
そこでまず、日本人になじみやすい英検2級を受験することでしっかりと基礎を固めてからTOEFL対策の勉強に進むことにしました。さらに中学3年生のサマースクールを活用して、英語のスピーキングやライティング能力を伸ばすという戦略を立てました。
「急がば回れ」の英検活用
英検塾探し
中学2年生の10月をスタートとして、翌年3月の英検2級試験を目指して行動を起こしました。手はじめに行ったのは、頼りになる英検塾を探すことです。以下を基準にして、2~3の塾に問い合わせて授業体験をしてみました。
- すぐスタートできること
- 合格への道筋がしっかり見える指導方針があること
英検塾の指導方法は、塾によってさまざまです。立派な校舎の英検塾であっても、合格できるという手ごたえがありません。教室が狭いマンションの1室であることに不安がよぎりましたが、英検アカデミーのセミプライベート形式を思い切って選びました。塾長が直接面談で説明してくれた内容に納得が行きました。個別指導に近い体制で、教材がよく練られており、合格へ向けた指導方針が明確だったのです。
結果的にこれは大正解でした。ほとんど個別指導のような環境で、担当のM先生が大変に熱心に指導してくださいました。M先生は、個人的にも息子のことをかってくれて、大変に期待をかけてくれました。小さな出会いですが、M先生は息子のことを彼の人生で初めて高く評価してくれた人、と言っても過言ではありません。いまだに感謝しています。
親子受験で英検2級に合格
英検2級の勉強は、息子には最初は難しいようでしたが、徐々にレベル感が合っていくようでした。「果たして間に合うのか」と祈るような気持ちでM先生と連絡を取りながら見守りました。盛り上げようと、私も同じ会場で準1級を受験することにしました。その気持ちが通じたのか、息子は1回で合格することができたのです。これも英検に集中したおかげでした。嬉しくて2人でお祝いをしたことを覚えています。これでやっと自信を持ってTOEFLに進むことができると安心しました。
TOEFLへのブリッジ効果
その後、TOEFL対策塾に切り替えて本格的にTOEFLを勉強し、最終的に80点を突破することができました。もし英検2級で基礎固めをしなければ70点台で終わっていたと考えています。
私の感覚では英検は日本人にとって英語学習のよい導入になると思います。中学時代に受験にトライすると自然に英語の総復習になり、知らないうちに実力が付きます。英語は段階を踏んで勉強することが大事ですから、英検で無理なくレベルアップしていけます。
知り合いの小学生のお嬢さんが海外の中学校を受験するので、英語をゼロからどうやって勉強すればよいかと相談されました。英検塾にまず行って英検5級から受けるといいですよ、とアドバイスしました。コツコツと取り組まれて、小学生で英検準2級まで進まれました。努力が報われて志望校に合格し、今は楽しく学校生活を楽しんでいる、とのことです。
サマースクールを活用
ESLコースからステップアップ
開成中学では中学2年生くらいから夏休みを利用してサマースクールに参加しはじめます。最初は学校がすすめるサマーESLプログラム(英語の夏期集中講座)に参加することが多いようです。そこで楽しい経験を積んだ生徒たちは、次回のサマースクールではもっとハイレベルなサマースクールや自分の関心分野に特化したプログラムを探して参加しようとします。
自発的にTOEFLを勉強しつづけて、80点を超えると出願資格が備わるため、高校2年生の夏休みくらいにアメリカのトップ10ボーディングスク-ルの チョート・ローズマリー・ホール(Choate Rosemary Hall)などのサマープログラムに参加します。さらにハイレベルなイエール大学やコロンビア大学のサマーセッションに出願する生徒もいます。
カナダのアップルビーカレッジ(APPLEBY COLLEGE) サマーESLプログラム
Summer Camps
https://www.appleby.on.ca/summer-camps
(7月末から1か月間)
※英語力不問。中学2年生が初めて参加するサマースクール向きです。
アメリカのチョートローズマリーホールのアカデミックエンリッチメントコース(Choate Rosemary Hall Summer Programs academic enrichment)
Choate Summer Programs: Academic Enrichment
https://www.choate.edu/summer/academic-enrichment-program/academic-enrichment(6月最終週から5週間)
※TOEFL80点以上想定。成績表、エッセイ、推薦状などを提出します。
息子のTOEFLスコアアップ実例
息子の場合、中学2年生でカナダのサマーESLプログラムに参加しました。中学3年生の7月には相当吟味して、フィリップスアカデミーアンドーバー(Phillips Academy ANDOVER)のサマーセッションELL(English Language Learner)コースを選びました。
https://www.andover.edu/summer/on-campus-programs/summer-learning#ell
ボーディングスクール受験のため、中学3年生では通塾でTOEFL70点に到達してからサマースクールで生きた英語を学んでスコアを上乗せする計画でした。スピーキングスコアが低いことが課題だったのです。トップ10スクールのサマースクールはしっかりと勉強させてくれます。大量の宿題とホームシックで途中挫折する生徒もいるほどです。
サマースクールでは息子も最初はかなり大変なようでしたが、何とか乗り切ったことで自信につながり、留学に本腰が入りました。サマースクールでの勉強の甲斐があり、TOEFLスコアが66点→77点へと大幅アップに成功しました。やっとTOEFL80点に手が届くと思いました。その後、11/25のTOEFLテストで念願の81点を取り、第一志望校にも出願することができました。
TOEFL77点と80点ではあまり差がないように見えますが、入学審査官の評価は異なります。TOEFL80点の方が学校の正式な入学審査会で承認を得やすくなるようです。
Reading | Listening | Speaking | Writing | Total |
18 | 16 | 14 | 18 | 66 |
Reading | Listening | Speaking | Writing | Total |
19 | 19 | 18 | 21 | 77 |
最後に
英語の実力というもの
中学生から大学生、社会人まで納得のいく留学をしたければ、TOEFLテストとの戦いになります。TOEFLはひとことで言えば英語の実力・総合力を反映するものと感じています。4カテゴリーのひとつでも取りこぼすとハイスコアになりませんので、底力が必要なのです。
アメリカのトップ大学合格者の体験談で、TOEFLのスコアアップ対策で頑張っているのになかなか伸びず、出願準備時期になりエッセイを書いたり、面接の準備をしたりしているうちに、自然に総合力がアップしてスコアが伸びていったと聞きました。
お金と時間を浪費した経験を教訓に
息子のスコアが80点に到達した後、90点に近づけるために、テストを毎月申し込み、高価なプライベートレッスンを受講させましたが、トータルでは1スコアもアップしませんでした。アップしないどころか、逆に落ちることもありました。私は外部の力を借りて小手先で何とかしようとしたのですが、お金と時間の浪費でした。
私の感覚では、TOEFLの方が英検よりも日常的に英語に慣れ親しんで、運用する能力が問われます。一定レベルの英検を合格できない場合、TOEFLのスコアアップは厳しいと思います。
私のこうした実体験を役立てて、英語初心者に対して無理なく、しっかりとした英語の実力がつく学習を支援したいと思います。