NYU合格ジャーニーその3.アーリーディシジョン出願の危機

こんにちは、ワーキングマザーのための受験留学アドバイザー・喜連川綾乃です。
アカリさん親子と私が手探りで進んだ受験のドラマその3では、私としては思いがけず直面することになったアーリーディシジョン出願エッセイでの困難を綴ります。
ED出願エッセイでつまづく
お願いされたエッセイライティングのサポート
大学留学の塾ではエッセイについては伴走者がついて綿密に指導してくれます。アカリさんのメンターは熱意ある、大変に優秀な方でした。過去の素晴らしい合格者エッセイのサンプルもふんだんに見せてくれます。
また、アカリさんの英語の執筆力は素晴らしく、語彙の選び方にも知性と品格があり、私はとても好きでした。
しかし、ヨーコさんから「コモンアップで苦戦しています」というメッセージをもらい心配していました。
すると、アカリさんご本人から「エッセイライティングをサポートしてほしい」というメールを受けました。
(参考)アメリカの大学出願に必要なエッセイとは
コモンアップとサプルメンタルエッセイのどちらが重要か?
アメリカの大学出願にはCommon Application(コモンアプリケーション)、略して「コモンアップ」という「アメリカ大学共通出願システム」を使用します。アメリカの大学への出願ポータルです。コモンアップですべての大学に共通で「パーソナルエッセイ」(650字以内)を提出し、さらに各大学から個別に指定されるサプルメンタルエッセイ(個別エッセイ)を提出します。
エッセイは大学の合否に決定する極めて大事なものです。コモンアップのパーソナルエッセイでは差が付きにくいため、サプルメンタルエッセイの方が影響は大きいと言われます。
しかしながら、厳しい競争をくぐり抜けた合格者のパーソナルエッセイが平凡な出来だということはまずないはずです。というのは、サプルメンタルエッセイでも結局のところ、自分自身について語ることになりますので、パーソナルエッセイではその基盤が語られるからです。
コモンアプリケーションのパーソナルエッセイ(共通願書エッセイ)について
2025年入学コモンアップのテーマは以下のプロンプトからの選択でした。
- Some students have a background, identity, interest, or talent that is so meaningful they believe their application would be incomplete without it. If this sounds like you, then please share your story.
- The lessons we take from obstacles we encounter can be fundamental to later success. Recount a time when you faced a challenge, setback, or failure. How did it affect you, and what did you learn from the experience?
- Reflect on a time when you questioned or challenged a belief or idea. What prompted your thinking? What was the outcome?
- Reflect on something that someone has done for you that has made you happy or thankful in a surprising way. How has this gratitude affected or motivated you?
- Discuss an accomplishment, event, or realization that sparked a period of personal growth and a new understanding of yourself or others.
- Describe a topic, idea, or concept you find so engaging that it makes you lose all track of time. Why does it captivate you? What or who do you turn to when you want to learn more?
- Share an essay on any topic of your choice. It can be one you’ve already written, one that responds to a different prompt, or one of your own design.
サプルメンタルエッセイ事例(バーナードの2025年エッセイテーマ)
- Barnard College is an extraordinary community of women committed to fostering curiosity and the exploration of new experiences and ideas. By utilizing the resources of our campus, our Foundations curriculum, and New York City, our students expand their world and discover their own capabilities. How do you envision these intersecting components of Barnard shaping your academic and personal journey? (200 words max)
- Barnard College students engage in the bold questions that define their generation. Choose one question that you have about the world around you, and explain why it matters to you. (150 words max)
- In college, you will encounter others with diverse viewpoints and experiences. Describe an instance where you engaged with someone who held a different opinion and explain how it shaped your perspective on the issue. (150 words max)
困った事態
なぜなのか?
アカリさんから見せてもらったエッセイは、まったく自分に関係ないようなクリエイティブライティングでした。自分の内面に肉薄し、吐露するという観点はありません。
これは具体的に示さなければと思い、私が「想像で」アカリさんの生い立ちから現在までの自己形成のプロセスを書き起こして見せ、自分についてもっと書いてみることをお願いしました。
その結果、出てきたのはフランケンシュタインについてのストーリーでした。
「なぜなのか??これでは出願できないではないか」と心配になり、ヨーコさんと話してみると、「アカリは小さい時から自分のことを語らない。トロフィーをもらっても全く何も言ってくれない子だった」とのこと。
アカリさんの生い立ちのことや学校のことを少しずつ引き出すと、どこかとらえどころがなく、日本人のように「一生懸命がんばります!」というわかりやすさがありません。彼女の特色は日本の複数のインターとアメリカのボーディングスクールでの多彩な学歴と写真などの課外活動の素晴らしさでした。でも本人は「ただ単に楽しいからやっただけ」という素っ気なさで、個人のエッセイに落とし込めません。
アカリさんといろいろ話すうちに、純ジャパの自分では想像できないような、様々なアイデンティティの葛藤を引きずってそれなりに苦しんで生きてきたことを思い知らされました。頭では以下のような思いはあるのですが、本当の自分を見せることを避け続けた結果、自分を主語にして語ることがどうしてもできないのです。
自分の出願書類を見ていて、課外活動がとてもアートや映画に集中していると感じ、コモンアップのエッセイではもっと自分自身について話したいと思いました。そのため、私は自分のアイデンティティの苦労に関して書くことに決めました。
私は自分が誰であるか、何が好きか、どんな価値観を持っているか、ずっとわかっていました。しかし、それを表現しようとするたびに、特に学校では周りから好かれないと感じました。だからこそ、自分が誰であるかを知っていながらも、周囲の反応を気にして隠す必要があると感じ、その期待に応えようとして、自分に制限をかけてしまったのです。
しかし、写真や映画制作は自分を表現するための重要な手段でした。それに対して、周りの人たちは私を嫌うのではなく、むしろ褒めてくれるようになり、認められるようになりました。だからこそ、私は自信を持ち、他人の評価に支えられ、映画制作に積極的に取り組むことができたのが大きかったんだと思いました。このことを理解して、私はコモンアップで、自分を隠さずに表現することに対して以前よりもずっと心地よく感じられるようになったことについて書こうと決めました。 もしこのエッセイよりもっと強いストーリーやテーマがあると思われる場合は、どの方向性で進むべきか教えていただけると助かります
<アカリさん自身の作品>


